2024年度入試から、神奈川県公立高校入試における面接が廃止、というニュース、いまさらですが、
最近、うちの塾内部でまた話題になったので、コラム第一弾として、この件について思うこと、あらためて書いてみようと思います。
神奈川県内の集団塾さん、個別塾さんも、コラムなどの記事でこのニュースには皆さん書かれていて、細かい点についてはそうした記事をご覧になった方が早いかとは思います。
要するに、2024年度の入試から面接は廃止となり、「内申点」と「学力検査」のみで合否が決められる、ということになりました。
いろいろ問題点が指摘されていますが、わたしはこの面接廃止、真っ当だと思いますし、賛成ですね。
というのもやはり、面接が形骸化(面接点では差がつかない、10分程度でその生徒の人となりは分からないなど)していたのは事実ですから。もちろん、入試前には塾でも面接練習はするのですが、一部の高校をのぞいて、現実的に、面接ではたいして差がつかない、という暗黙の前提のもとで面接指導をしていたのは、どこの塾さんも同じかと思います。
そんな、"もともとあってもなくても関係なかった面接"が無くなったところで、じゃあ別に変わらないのではないか、と思いますが、どうなんでしょう。
①内申点が重要度を増すかどうか。
筆記試験の点数換算の内申点1のもつ重みを考えてみます。
【変更前】
従来標準型の
内申:学力:面接=4:4:2
での、内申点1点の重みは、計算上、
2年後期内申 ⇒ 内申1で、筆記試験の約3.7点ぶん
3年後期内申 ⇒ 内申1で、筆記試験の約7.4点ぶん(中2の倍)
でした。
これが、仮に、面接2の部分が半々に割り当てられ、内申:学力=5:5 になったとしても、比率自体は変わりません。
内申1の重みは、点数換算で上記のままです。
(学力重視型の3:5:2であれば、
内申の2ぶんを、割り振って、内申:学力=4:6 になったとすれば、この場合は若干、内申が幅を利かせる割合が増えますね。)
数字の上では、従来標準型の比率の場合、
筆記試験換算した場合の内申1の重みは、ほぼ変化がない、と言えそうです。
(各高校がどういう比重をかけてくるかは未知数ですが、これまでの自校の特長をガラッと変える高校が出てくるのは想像し難いところです。)
②2次選考に調査書の評価が加わる。
2次選考はもともと、学力と面接の一発勝負で、内申は考慮しない、という特性がありました。
今回の変更から、2次選考に「主体的に学習に取り組む態度」が評価基準としてしっかりと組み込まれます。(1次選考には関係ないとのこと。)
ただ、、、わたしが思うに、2次選考の変化、そこまで重要とは思えません。
というのも、すでに記事を書いている神奈川の塾さんたちは、一様に、2次選考の良さがなくなる(資料の一部が整わない者への配慮がなくなる)ことを危惧しておられますが、、、
うーん、個別指導塾としての経験上、「2次選考ねらい」の生徒さんはごくごく少数で、そもそも、1次選考で受かるよう受験計画を組み立てるのがメインの方針なので、内申不要の2次選考が変わることを「今回の大問題点」とするのは、ちょっと大袈裟だな、とわたしは思うのです。
「資料の一部が整わない者への配慮(内申が低い)」のある2次選考ねらいというのは、
上位校チャレンジ受験パターンか、不登校などの生徒への配慮というパターン、この2種類があるかと思いますが、それぞれについて、自分なりに考えてみました。
◎チャレンジ受験パターン
内申が足りないけど上位校を挑戦したい。
一般の個別指導塾ではあまり見かけないパターンの生徒ですね。
まぁ塾さんによっては、学力一発勝負のチャレンジ受験を強みにしている教室もあるとは聞きますが…
公立高校受験を専門にしている集団塾さんとかですね。
個別指導塾だと、普段からその子とのコミュニケーションのなかで学習をサポートしていくため、その子の内申点と学力がある程度比例していく傾向にあるかと思います。(良く言えば、その子の学力に比例した内申点をちゃんと取らせてあげられる。)
その子の性格を把握し、学校の提出物の様子だとか、内申の細かい部分をチェックしてアドバイスし、モチベーションの管理もしているので、学力はあるのに内申点がとても低いみたいな、乖離は起きにくいと思っています。
中3にもなれば、志望校の話も塾で普段からするので、受験期になって急に、「2ランク上の高校を2次選考ねらいでもいいから受検したい」という流れになることは、ほぼないんですよね。
長期的に生徒と密なコミュニケーションをとっているためかと思います。
集団塾だと、もしかしたら違うのかも知れませんね。内申点は低くても、模試の偏差値は非常に高い、みたいな、内申と学力に乖離があるパターンの生徒も、集団塾だと少数いるかもしれません。集団塾だと、学力は上げられても、その子の性格を含めた学習全般のフォローはできず、学校での態度がおろそかになって、学力と内申点にアレ?という差ができるのは考えられます。
個別指導塾では、そうした上位校チャレンジ受験が圧倒的に少ないので、2次選考の制度が変わっても、あまり気にならないのです。
◎不登校などの理由で内申がとても足りない、そうした生徒への配慮の2次選考というパターン
こうした悩みを抱える生徒は、個別指導塾にはよくいらっしゃいます。わたしも多く指導してきました。その子に合わせた指導をするので、例えば不登校の生徒にも、学年をさかのぼって勉強を教えられるのです。学校とは違う空間で安心して、同学年との競争意識とは別なところで、勉強に励んでくれる生徒さんは多いです。
ただそうした生徒さんは、私立高校を進路に選択することが多いですね。
もともと公立の雰囲気になじめていなかったり、勉強勉強!というよりはおっとりした性格の子が多いので。そうした子が公立2次選考で学力挽回狙い!という受験計画になるのは想像し難いです。
神奈川県には私立高校の補助金も整備されつつあります。
受け皿の幅広い私立高校の道が増えた分、例えば、不登校やその他の理由などで思うような内申が揃っていない子などは、はじめから私立ねらいが多く、リスキーな公立2次選考ねらいという発想は、わたしの近辺では見かけないのです。
まとめ。
面接廃止で変わるのは、2次選考に調査書の評価が加わる、ことが一番大きいのですが、見てきたように、そもそも純粋に2次選考ねらいの生徒はごくごく少数なので、取り立てて騒ぐほどのことではない、ということです。
チャレンジ受験になってしまうくらいであれば、その高校を2次選考狙いから、すこしでも1次選考狙いの範疇に入るよう、日ごろから内申を上げる努力をしていれば良かったのでは、という話です。
チャレンジ受験というのは、学力と内申点の乖離から起きると思うのですが、個別指導では内申だけ低いという状況を作らせないフォローができます。学力に見合うだけの内申点を普段からきちんと取らせてあげられます。
そして、これはどの生徒にも言えることですが、内申が重要だよ、という話は今に始まったことではないので、
これからも引き続き課題の提出やノート・レポートの書き方など、いわゆる内申UPの努力を欠かさずおこなっていくのみ、です。
(お説教みたいですが…)
何より大事なのは、受験の仕組みが変わろうが、身近な友人との内申の差があろうが、気にせず、自分の志望校の合格基準に自分の内申と点数をのせれば受かる、という「受験は自分との闘い」であることをしっかりと心にとめて、粛々と学力を上げていくことだけです。
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